第一章   CS=顧客満足は企業の将来を決める

1-1 お客様にとっての企業の価値

A:CSの意義と現実を知っておこう

CSとはお客様のニーズを把握し、お客様の立場に立ったサービスを提供し、期待に応えていく活動です。では、お客様を満足させるためなら、何でもやらなくてはならないのでしょうか。CSは過剰な商品提供やサービスが要求されるわけではありません。それによって企業の利益を圧迫するようなものではないのです。

(1)CSの現実を理解してから、CSの真の意義に納得!
顧客満足の考え方は、「お客様が商品やサービスに期待してくださる」ことから始まります。CSを追求する中で、「お客様第一」「すべてはお客様のために」などと掲げても、単なるスローガンで終わってしまっている企業があることも事実です。CSを年に一度しか行わない単なる「宣言」やホームページの賑わいにしているだけの企業もあります。そうした企業が不祥事を起こし、顧客の信頼を失い倒産へと追い込まれていることは珍しいことではありません。「CSの実現は、企業が取り組まなければならない課題であり『かけ声』ではない」という現実を、まずはつかんでおきましょう。

POINT
・単なるスローガンに終わらないCS推進力をもつことが企業の課題である

・モノで溢れる市場の中で、選ばれ続ける企業であることが企業の発展、存続のために重要である

B:お客様の期待水準を理解しよう
お客様の満足度合は、提供するサービスの品質で決まります。サービスの品質は、企業が提供する商品・サービスがお客様の期待水準をどれだけ上回ることができたかで決まります。期待を上回る商品・サービスを提供し続ける企業がお客様に選ばれ、期待を下回る企業はお客様から忘れられていくのです。

(1)お客様の期待水準を知って、お客様満足度に納得!
CSを実現するためには、まず、お客様が企業に対してどのように、どの程度の期待をしているか、という期待水準を知ることが大切です。一方的に、「独自のサービス」「独自の商品」を提供しても、独りよがりのサービスや自己満足の商品にしかならないこともあります。期待水準を知るためには、常にお客様から寄せられた意見やアンケート調査などを有効活用することが大切です。

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POINT
・期待水準は宣伝、広告、セールス、これまでの利用体験、口コミで決まる

(2)CSの実現度合はお客様の判断で決まります!
よいサービスを提供した結果として、顧客の満足度が決まり、会社の収益を高めます。お客様が、そのサービスの提供プロセスを判断し、満足度を決めるということです。
つまり、CSの実現は紛れもなく、企業の成果に直結しているということをしっかりとつかんでおきましょう。

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1-2 CS実現が生み出す成果

A:顧客と長くお付合いしていくために
お客様との関係を深めて、長いお付合いを目指すのもCSの1つの姿です。顧客のニーズにこたえ、満足度を高め、関係を維持することで、収益率を高めることができるのです。そうした取り組みについて、理解しておきましょう。

(1)CRMとはお客様との関係性を軸にした経営手法のこと
お客様のニーズが多様化・高度化する中、激変する市場で生き残っていくために、多くの企業が新たな取組みや自社の事業改革を迫られています。1970年代から1980年代、日本の企業は質の高い商品を大量に販売することで、ビジネスを拡大してきました。ところが1990年代に入ると、市場に大きな変化が起こります。消費者のニーズが多様化し、それぞれの要求に合った付加価値を求め、商品を「選んで」購入する傾向が出てきたのです。
この傾向は、それまでのような「商品志向」では生残りが厳しい時代に突入したことを意味します。そこで企業は、お客様との関係を深め、生涯を通じて支持を得るような、「お客様志向」経営に変革していく必要が出てきたのです。それを実現するのがカスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)です。

(2)お客様との関係を深め、生涯を通じて支持を得る
「新しいパン屋は近所に何軒もできたけれど、私はこのA店でしか、ここ数年パンを買ったことがない」というお客様がいたとしましょう。そのお客様に「なぜ、そのパン屋を選ぶのですか」と尋ねてみると、「いつも私が会社帰りに寄ると、黙ってレーズンロールを1袋とっておいてくれるんです。私が好きなパンを覚えていてくれているのです」と笑顔で答えてくれます。
まさにこの状況が、CRM(Customer Relationship Management)の成功事例です。
お客様との関係を深め、生涯を通じて支持を得るような「お客様志向経営」。そのための手法がCRMです。

(3)CRMを実現するには情報システムの応用が近道です!
CRMでは、「顧客データベース」が重要な役割を果たします。個々の顧客とのすべてのやり取りを一貫して管理できるデータベース・システムを構築するのです。その情報をもとに細かく顧客のニーズに対応し、顧客の利便性と満足度を高めます。その結果、お客様は「お得意様」「常連客」として扱われている実感をもちます。当然、その企業を選び続けることになり、収益率を高める結果につながるのです。

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(4)お客様を「個」としてとらえよう!
CRMとは、お客様を「個」として捉えることから始まります。お客様のことを十分に理解し、お客様一人ひとりに合った商品やサービスを提供することにより、継続したビジネスへとつなげていくことを目的とします。商品の質や価格のみでは競争力に勝つことができなくなったいま、お客様の視点に立ったCRM型の企業へと変革し、1人のお客様から「最小のコストで最大の利益」を得る仕組みをつくることが、企業の勝残りの条件となってきました。さまざまな顧客ニーズに合った対応が、CS経営に結びつきます。

POINT
・LTV(life time value)=生涯価値の向上がCRMの目的
・CRMとはお客様を「個」でとらえること

1-3 CS実現での2つのルール

A:顧客の支持、不支持が利益に直結する
お客様を取り巻く環境は大きく変化しています。eコマース(電子商取引)がごくごく普通に利用されるようになり、企業とお客様のダイレクトな接点は形を変えることになりました。それだけに、1回のお客様との接点を通して、お客様の「要望」をお客様の目線にたって実現することに大きな「価値」が生まれました。

(1)お客様の不満足行動を見過ごしてしまったら危険です!
お客様の不満足の行動をとらえることは、企業にとって非常に重要です。
不満をもったお客様の4%しかクレームを言わないといわれています。クレームを言ってくださるお客様は、真摯に対応をすることでよい関係を取り戻すことができます。では、残りの96%の不満を感じたお客様はどうなるのでしょうか。結論は1つです。「お客様ではなくなる」。つまり、企業離れ、商品離れをおこします。ましてや、Bad Newsはすぐに周囲に広まります。1人のお客様だけではなく、一度に多くのお客様を失うことになるのです。

POINT       CS実現ルール1
・品質の高いサービスを提供する活動を継続的に行なう
・不満をもったお客様を見逃さない企業の積極的な対応が大切

(2)「お客様のニーズ」という言葉を曖昧にしない!
「お客様のニーズ」という言葉があまりにも簡単に使われすぎているという現実があります。「ニーズ」とは、お客様の「期待」や「要望」であり、企業の商品開発やサービス提供の根本に影響するものです。この言葉を安易に理解していると、お客様の「わがまま」にまでこたえることを当然であると回答するような判断をしてしまいます。「お客様のわがままはかわいいものだ」または「お客様は面倒なことを要求する」などという企業担当者の発言を耳にすることもありますが、これは大きな誤りです。お客様は「かわいい」「面倒な」存在ではなく、パートナーというビジネスの関係にあることをしっかりと受け止めておきましょう。

POINT CS実現ルール2
・お客様の真のニーズを見極め、不必要なサービスは行なわない
・お客様とのパートナー関係を大切にし、販売・収益につながる活動を行う