管理職は支援職
三州製菓さんの取り組みは斬新で「理」にかなった人材活用の仕組みがたくさんあります。組織図を拝見すると、一番上には、消費者(お客様)が位置し、社長が一番下にあります。斉之平社長は、笑顔で「管理職は当社では支援職と呼びます。支援職の仕事は、お客様と接する社員にいかに権限を与えて、自由に行動してもらうことです」と答えて下さいました。
女性の脳力を活かす仕組み
女性のライフスタイルを考慮した採用やパートナーさんから正社員への登用の背景には、このような「管理職は支援職」という考え方が根付いているからこそのことだといえます。その結果、アシスタントマネージャー以上が出席する経営会議の参加者には、20%が女性だそうです。ですから、前回も取り上げた「男性発言禁止タイム」も「支援をする」代表的な例であり、女性の脳力を上手く活かしたルールといえるでしょう。
他社での勤務経験がある女性ほど、会議の席では発言しない傾向にあります。「意見はありませんか?」と言われて、本心では「無理だよ、この人数でこの業務を回すなんて」と思っていても口に出さない習慣が身についています。だから、意見を出さないので、尊重されなくなります。時として勇気をもって、これ以上は我慢できないとばかりに発言をすると「無理です。できません。」とできないことの結論のみを強い口調で言い放ってしまいます。
この悪循環が、子育て女性が「もう一度働く」を断念している理由の一つでもあるかもしれません。「どうせ、働いたって、我慢することばかりだもの。誰も褒めてなんてくれないし・・・」と思ってしまうのでしょう。前回ご紹介したパートナー社員の並木さんが、「はじめて、仕事が楽しいとこの会社に来て思いました」とおっしゃっていたのが印象的でした。自分のがんばりを褒めてくれる仕組みがいっぱいだからです。支援され、活かされながら、会社に貢献していく仕組みがあるということです。初回でも取り上げた助け合い事例を毎月のベストプラクティス表彰する仕組みや月間優秀社員表彰がこれらの仕組みをより現実的な成果に結びつけています。
委員会活動が組織を理解する種と栄養に
また、「委員会活動」も興味深い取組みです。業務をしながら、ビジネス感性や組織理論を体験する機会でもあります。一人三役を実現できる背景には、この仕組みの存在が大きいのです。本当に斉之平社長は、「社員の脳力」の活かし方を脳科学の視野から構築なさっていると感じます。
委員会は13あるそうです。上述の表彰も、一人三役推進委員会、月間優秀社員委員会を通じて、社員が主体的にボトムアップで推進しているそうです。その他に、男女共同参画推進委員会、一人一研究委員会、シスター&ブラザー委員会など。委員会は予算をもっており、委員長に無役の一般社員がなることもあるとか。予算の利用には稟議書等は一切いらず、委員会で決定されればそのまま使うことができるそうです。そのかわり、有益であることは当然ですが、委員会の活動の成果につながらなくてはなりません。まるで、個人事業所や起業家の発想に近い感じの体験をすることができます。この活動には、自主的、積極的に、業務にあたる執務姿勢を醸成する「種」と「栄養」があるのです。社員を信頼し、社員を支援しながら、ビジネスを展開する三州製菓さんの「底力」を感じるばかりです。
地域を元気にする存在
このような活動が女性のパートナー社員から正社員登用率を30%以上にも押し上げているのでしょう。立ち寄らせていただいたカフェ・エス・テラス(社屋1階)にある空間は、地域の女性やファミリーを温かく迎え入れてくださる佇まいでした。
残念ながら、カフェでのランチをいただける時間には伺えなかったのですが、社員のランチ用に斉之平社長が玄米を炊いてくださることもあるとか。入り口には近隣農家さんの野菜も販売されていました。地域の元気を応援し、女性の活躍推進を目指す三州製菓さんの取組みには脱帽するばかりでした。
次回、最終回は「生きいきと働く」がテーマに、女性がヒットを飛ばした「パスタスナック」を取り上げます。どうぞ、お楽しみに。