ランチに密やかな悦びを
長らく続く外食がしにくい雰囲気の中、毎日の昼ご飯どうしていますか?オープンエアーなお店やテイクアウトを利用するなど様々な新しいライフスタイルの模索が続く中、昨年からお弁当派が着実に増加傾向にあるといわれています。
今まで手作りにはまるで興味のなかった外食派の人たちがお弁当作りに勤しむ姿を思い浮かべると、不思議と世界がいい方向へ向かっているような希望感を感じるのは私だけでしょうか。
お昼ご飯というのは、家族の一日の元気を願う朝ご飯や健康の土台を作る夜ご飯の責任感からから少しだけ解放されるプライベイトミール。もちろん家族の分までお弁当を作る人にも肩の力を少し抜いて、遊び心を調味料にして企てる一食になれば、お弁当習慣が心と身体を潤すニューベーシックになりそう!
されど、弁当の手間よ
妻となり母となれば尚さら一日三食ご飯作りばっかり!という世の悲鳴に激しく共感を覚えることも。それもそのはず、日本の家庭料理のレベルは高くバランスや栄養を考えた献立が四六時中頭の中を行き交う日々を過ごしている人も多いと思うのです。日本の女性たちに幸あれ!
そんな中でお弁当まで…と思うのは当然のこと。でもそんなプレッシャーを和らげてくれるチップを、今年没後40周年を迎える向田邦子の食のエッセイに見つけました。脚本家・小説家として数奇な運命を辿った彼女は美食家としても名高く多くのエッセイを残しています。その中で彼女が愛してやまなかった献立が度々登場します。
出典: Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/向田邦子
―日本に帰って、いちばん先に作ったものは、海苔弁である。まずおいしいごはんを炊く。(中略)かつお節を醤油でしめらせたものを、うすく敷き、その上に火取って八枚切りにした海苔をのせる。これを三回くりかえし、いちばん上に、蓋にくっつかないよう、ごはん粒をひとならべするようにほんの少し、ごはんをのせてから、蓋をして、五分ほど蒸らしてからいただく。(中略)ごはんも海苔も醤油も、まじりっ気なしの極上だった。かつお節にしたって、横着なパックなんか、ありはしなかったから、そのたびごとにかつお節けずりでけずった。プンとかつおの匂いのするものだった―
出典:『海苔と卵と朝めし』より
出典:白ごはん.com https://www.sirogohan.com/recipe/dasikatuo/
シンプルでも極上に
都内に小料理屋を営むほど食を愛していた彼女が最も愛していた食事には、日本人のベースの味覚をくすぐる力と素材の良さが共存しています。そしてこれはお弁当習慣のハードルを下げる重要なコンセプト。言い換えれば質にこだわれば手間も品数もさほど必要ないということ!
出典:山本山https://www.yamamotoyama.co.jp/contents/noriben
後編では、極上弁当を支えるこだわりのアイテム等。