Mammy's paper(マミーズペーパー)の「記事」

【学習の進め方】
この講座では、基本的な「ターニングポイントマネジメント」のメソッドを8回にわたって解説していきます。毎回、実例を挙げながら理解を進めていきますので、楽しく読み進めてください。「ターニングポイントは風の中で」の著者である石川かおるのターニングポイント経験談です。ドラマのようなストーリーを読みながら、なりたい自分を考える時間にしましょう。
講座の最後に「なりたい自分になるノート」があります。第7回の課題は今、あなたが悩んでいること、困っていることを「テーマ」として1つ選び、「今までとは違う」問題解決に挑んでみましょう。

<風が吹いたときの私 体験談>を募集しています。このテキストを読んで、「私も変わり始めたことを感じました」というお話がありましたらば、ぜひ、投稿をお願いします。

第7回 テーマ:「転機の良い種」を発芽させる仕事の進め方

ターニングポイントは「転機の種」を体感することからはじまります。その存在感を頭と心で確認したら、目の前にある「判断を必要とする事象・問題」に対して、ロジカルに一次判断をします。

<事例1>Aさんはメーカー系企業営業部の7年目社員です。
業界の中堅どころの会社です。このところ小口の競争見積の案件が続き、提案資料や見積の作成に追われていました。とは言っても、小口なので、価格勝負が基本です。そのこともあり、ほとんどを一人で「こなす」ように作成でき、仕事も早いので、上司からの評価はまずまずだと自己評価していました。本人も、「自分の仕事はきっちりと自分で完了できる」と自信があります。そのため、残業は規定内ではありますが、多い方でした。

大口案件は上司が指揮をとり、部分作成の指示が振り分けられてきます。ところが、上司から「今回は全体を君にまかせるよ。頼んだよ。このところ、実績が上がっているから」と、大口案件の提案企画のリーダーに指名されたのです。

もちろん「承知しました」と驚きながらも返事をしました。ですが内心は、「なんでいきなりなの?!」と考え込んでしまったそうです。気持ちを落ち着かせて「やるしかないな」と動きだすことに。提出期限までは約4週間、上司への1回目のプラン説明は1週間後と段取りを決めて動き出しました。まずは、事案を読み解き、勝負をかけるポイントを絞りだすことに。ところが、いくら事案の仕様書を読み返しても、ひらめかないのです。全社の企画書データから類似性のある案件を探し出してはみても、ピンと来る勝負をかけるポイントがイメージできないのです。いくつかの候補はあがるのですが、「これじゃない」とすぐに判断できてしまうほどのものでした。いつもの小口案件とは何かが違うのです。

「何かが違う」と思いながらも、手立ては社内のナレッジ情報を見るしかありません。そのときです!「違うのは私だ!大口案件を仕切るのは初めてなのだから、いつもと同じやり方じゃ、何もできないに決まっている。しかも、仕様書の要望内容自体がこの部署や会社として、経験したことが無いに等しい事案なのだから」と気づいたのです。つまり、「判断を必要な問題」に直面しているのに、その問題解決を「今までの視野」で進めようとしていたということです。ここでの判断はロジカルな一次判断が的確にできました。そして、この判断ができると、全体の物事の進め方を効率よく、「漏れなく、ダブリなく、抜けなく」組み立てることができます。それまでの仕事の進め方の段取りの良さがベースにあるので、特に「漏れ、ダブリ、抜け」(MECE)のチェックがスピーディーにでき、思考は構造化されていきます。この段階で、転機の種は、良い種として動きはじめています。

 

 

 

 

 

Aさんは、「仕様書のどの部分が、いつも担当している企画提案と異なるのか」をゼロベースで分析することにしました。いつも担当している提案企画との違いは、「当社がこの新しいプロジェクトに挑むに当たり、貴社とのパートナーシップを選ぶことにより、当社の顧客が享受するであろう新たなる価値や利益についての提案も期待したい」という点にありました。

小口の案件では、そのクライアント企業のメリットを記載することで、それとなく「自社の業界における信頼が高まる」というような文言を書いていました。ですが、この大口案件は、エンドユーザーの利益や価値を追求する内容なのです。しかも「新たな価値」となると、頭をひねっても打つ手が浮かんできません。これもまた「はじめて」の経験です。

かなり悩んだ結果、「この提案は自分には難しい」と上司に伝えたそうです。ところが、「誰がやっても、難しさは変わらないから、やって欲しい」と言われ、担当を継続することに。Aさんは行動を変えることにしました。「手持ち情報はゼロなのだから、そこをなんとかするしかない」と考え、大きなサイズのポストイットに、思い浮かぶだけの「情報を持っていそうな人」の名前を書き出してみました。結局、同じチームには誰もおらず、他のチームやクライアントと何らかのかかわりをもったことがある社内の人を探す出すことにしました。

まずは、他の営業チームの若手社員に声をかけたのです。「若手営業担当のランチ会をしませんか?最近、クライアント企業のニーズの多様化に対して、過去データだけでは理解できないことはないですか?情報交換しましょう」と。思いのほか、参加者を募ることができ、1回目の開催は数日後に開催決定。声掛けをしながら、今回の大口案件のクライアントに関する情報も入手できました。

1年下の後輩から、そのクライアントの役職者と、徳島工場の管理課長が親しいことを訊き出し、自分の上司経由で早速、ヒヤリングを敢行。上司は、「無理しなくてもいいよ。獲るには難しい案件であることはわかっているから」と言ったそうです。後から考えると、「ひどい話だ」と思ったそうですが、そのときは、まったく気にならなかったそうです。「とにかく、やり切ろう」「やり切りたい」という想いしかなかったからです。着実に「転機の良い種」は発芽していました。

こうしてAさんは、プランを作成し、上司の了解を得たうえで、提案企画を進めていきました。必要なデータ作成1つをとっても、今までには使ったことがないデータがあり、後輩にサポートを頼みました。今までならば、嫌そうな顔をする後輩が「面白そうですね。この内容だと、先輩方の切り口じゃ、勝てないでしょうね。新しい切り口で、獲りたいですね、この企画。一緒にやらせてください」と言ってくれたそうです。さらに「Aさん、この論調だと、エンドユーザーにとって、という部分が希薄に感じます。お忙しいと思うので、文章構成に赤入れしてもよろしいでしょうか?」と2年目の社員にズバリと言われたそうです。

その時、Aさんは、「みんなサポートじゃなくて、当事者になってくれている」と感じたそうです。協力とかお手伝い、という言葉を使わなかったからです。すべてが新鮮で、すべてが身体の中に染み込んでくるようだった、と後日、話してくれました。一体、どうして、周りが変わったのだろう?と思いながらも、提出期限に追われていきました。

プレゼンの結果は、残念ながら2位。ですが、この企画提案にかかわったメンバーの意見で、過去データの情報内容の見直しがはじまりました。「必要な情報がクライアント要望の変化に合致していない。データに反映されていない情報を共有するためのコミュニケーションをとれる場が欲しい」という意見を出したそうです。そのときのご自分の背中には、エネルギーが溢れる熱い風が吹いていたと言っていました。ランチ会の声掛けをしたときと同じように。

Aさんは今、社内のヒューマンリソースのマネジメントを担当するチームのリーダーとして活躍しています。オフィスイノベーションのデザインや教育も担当しています。営業のランチミーティングには、今でも飛び入り参加しているそうです。Aさんにとっては、自分が本当にしたい仕事、可能性を自分の力で見つけ出したということです。ターニングポイントになったことはまちがいありません。

Aさんは、「今までとは違う」に気づいたことから、ロジカルに問題を分析し、解決方法を探し出しました。転機の良い種が発芽し、最初の結実を迎えています。ですが、その実は、静かな種として、Aさんの無意識ゾーンに佇んでいます。次の転機を待って。

●仕事の進め方ポイント

 

 

 

 

 

① 持っている情報を書き出し、仕分けする。
(目で確認、頭を整理する・ロジックツリー)
② 不足している情報を獲得する方法を決める。何度もチャレンジする。
③ 仕事の進め方を明確にし、想いと方向性を周囲に伝える。
(段取りとすべきことを構造化して考える)
④ 同じ方向性を共有できるメンバーをみつける。
(人とかかわる、巻き込む場をつくる)
⑤ 「はじめて」はチャンスだと考える。

【なりたい自分になるためのノート】TPMを実践してみましょう。
課題 今、あなたが悩んでいること、困っていることを「テーマ」として1つ選び、次
の手順で「今までとは違う」問題解決に挑んでみましょう。
① 情報を書きだす練習をしてみましょう。
あなたの「テーマ」について、ポストイットに1つずつ情報を書き入れてみましょう。次に、同じグループごとに集めてみます。さらに、そのグループに名前を付けてみましょう。例)「できない理由」「壁となる事情」「したくない理由」
② ①で作ったグループに対して、それらをどう解決したいのかを考え、文字にしてみます。

まずは、置かれた状況を分析する練習から始めましょう。大切なことは、頭の中にある情報を整理できることです。

編集長
編集長
イシカワカオル 女性

コメント

  1. […] 「働き続ける女性のためのターニングポイントマネジメント基礎講座 第7回」はこちらから […]

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