Mammy's paper(マミーズペーパー)の「記事」

【学習の進め方】

この講座では、基本的な「ターニングポイントマネジメント」のメソッドを解説していきます。毎回、実例を挙げながら理解を進めていきますので、楽しく読み進めてください。「ターニングポイントは風の中で」の著者である石川かおるのターニングポイント経験談です。ドラマのようなストーリーを読みながら、なりたい自分を考える時間にしましょう。

講座の最後に「なりたい自分になるノート」があります。第8回の課題は「TPM実践をしてみよう」ということです。自分と向き合う時間をつくりましょう。

 

第8回 テーマ:「転機の良い種」を発芽させる仕事の進め方

ターニングポイントは「転機の種」を体感することからはじまります。その存在感を頭と心で確認したら、目の前にある「判断を必要とする事象・問題」に対して、ロジカルに一次判断をします。

 

<事例2> Bさんはお菓子メーカーの工場管理業務を担当する入社9年目の社員です。

Bさんは、育休後の職場復帰でとても苦労していました。保育園に預けているお子さんに喘息の持病があり、会社を早退することが増えていたのです。ですが、新しいシステムの導入が目の前に控えており、職場内には早退しづらい空気があったそうです。何よりもBさん自身が、このシステム導入を企画し、準備を進めていたので、「万全な体制でかかわりたい」と考えていました。

 

お子さんの体調は安定するのが難しい状態が続いています。保育園から連絡が入ると、自宅に近い保育園まで約40分を運転して戻っていました。連絡があったからといって、すぐには出られませんから、結局は、お迎えに行くまでには1時間くらいはかかってしまいます。お子さんは、迎えにいくと、いつもグッタリとしていて、抱きかかえると力いっぱい、しがみついてきます。可愛そうな気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいでした。毎日「今日は大丈夫だろうか?」とハラハラしていることも大きなストレスになっていました。

 

Bさんは、あれこれ頭の中で思い描いては悩み込んでいました。「堂々巡り」に慣れきっていたそうです。「どうせ、簡単には答えなんてでない」と。ですが、その時間にもつらくなりはじめたころ、「問題解決は一度、俯瞰してみるとよい」と何かの本で読んだのを思い出したそうです。そこで、自分が置かれている状況を図にして描いてみたそうです。

 

その結果、一番大切なことは、お子さんの側にいること、そのためには在宅で仕事をすること、という結論になりました。しかし、会社の現状からすると、実現可能性はゼロに近いことです。次に、在宅ではないが、保育園に短時間で迎えに行く方法を考えました。そうすれば、毎日の「ハラハラ」もいくぶんか気が楽になります。「よし、この方向性で解決策を考えてみよう」ということに。この段階で、ロジカルな一次判断が完了し、転機の種は良い種に育ち始めました。

 

とは言っても、解決方法は、①転居②保育園を変える、そして③勤務先を変える、しかありません。①と②には、かなりレベルの高いチャレンジになります。③勤務先を変える、というのは、会社を変える、という方法と同じ会社の他の勤務場所に変えるという2つの選択があります。Bさんは、「同じ会社の他の勤務場所に変える」を選びました。勤務先の会社には、思い入れがあったそうです。

 

工場管理は本社ビル内ですが、お菓子の会社なので、県内に販売店(店舗)があります。店舗勤務に変わることで、お子さんの体調が安定するまでの何年間かを乗り越えよう、と考えました。会社を辞めることも考えましたが、お子さんの将来を考えると「働き続けたい」と思ったそうです。ちょうど、自宅から車で10分ほどの場所に店舗がありました。ここしかない!と思い、休みの日に様子を見に行ってきました。ここだ!直感したそうです。

 

すぐに人事に異動願を出す準備をはじめました。普通の人ならば、上司に相談して「子どもが病気なので、異動をさせて欲しい」と頼み込むことでしょう。Bさんは、違いました。チャンスは1回しかない、自分の生き方がかかっている、と腹を括ったそうです。

 

子どもの体調が安定したら、企画やシステム関連の部署に戻れるように、今回の異動願の理由や、店舗勤務期間であっても自分が復帰する仕事にかかわる意欲と準備があることを「人事への企画書」として作成したのです。本心では担当しているシステム導入にずっとかかわっていたい、という想いを込めて。その内容には、「リサーチ」という内容があり、他のお菓子メーカーのシステム稼働をリサーチすることや、顧客目線で販促をリサーチすることなども含まれていました。さらに、その企画書には、「○○店での勤務において、店舗2階の事務スペースにあるPCをリサーチ業務用に使わせていただきたい」という主旨のことも記載しました。

 

何度か書き直しているうちに、「○○店舗の2階事務スペースで、現状業務を継続させていただきたい」というストレートな内容に変わっていきました。週に2日は本社に勤務、残る3日は店舗の2階で勤務。スカイプなどを使えば、顔を見ながら同僚と相談もできます。店舗からは10分程度で保育園にお迎えにいくことができ、子どもの「グッタリ」も軽減できます。後にこの事務所は、「子育て女性のサテライトオフィス」に。この異動願を書いていると、勇気がいっぱい湧いてきたそうです。「子どもを第一に考える、それでも仕事も続けたい欲張りな私がいてもよいはずだ!」と思い続けました。背中にエネルギーに溢れる風が吹いていたのでしょう。

 

このモードに入ると、ロジカルさは、情緒を巻き込んだ最強の営業力になります。Bさんは、周囲の女性社員の意見をヒヤリングし、その声を企画書兼異動願に盛り込みました。なぜ、今の仕事を継続したいのか、という「想い」を込めて。その中には、女性が子育てのために、仕事の質と量を「想い」とは反する方向に変えるのではなく、同じ方向にするためのイノベーションを提案したい、と書いたそうです。

 

本当に会社に対して、営業をしたのです。下手をすればクビかもしれない、とご主人に話したところ「ここまで真剣に社員として仕事を続けたいと訴えたのだから、クビになっても、その経験をするだけでも儲けものだよ。出産前のバタバタしていたころよりも、ずっと頼もしいよ」と。

 

この「想い」は、上司とチームを巻き込んでいきました。結果として、店舗の2階をサテライトオフィスとして、週3日、使わせてもらうことになりました。お子さんの症状は年齢と共に少しずつは落ち着くという医師の言葉を信じて。「今は、この環境に感謝しよう」と店舗の仕事も手伝いました。

 

ところが、この店舗のお手伝いをしているうちに、店舗のスタッフから、いろいろと質問を受けることに。その質問に回答し、その内容を会社に報告していたところ、工場長がもっと話を聞きたい、と言い出し、工場長と販売スタッフ、商品企画の意見交換会を開催することになったのです。成果を追えるほどの内容ではなかったようですが、「場」を作ったことは、社内でも大きな話題になりました。

 

数か月後、店舗スタッフ&Bさんは企画した「メッセージ付きお菓子」を商品企画部に提案しました。クッキーの表面に「ありがとう」「ごめんなさい」「また遊ぼうね」「元気になってね」「私のおやつ」というようなメッセージが書いてあり、子どもたちが欲しいメッセージがついているお菓子を袋に入れて購入するというものでした。すぐに商品化はされませんでしたが、「商品開発の現場って、もしかしたらお客様をよく知っている現場とアイデアを実現できるかを判断する工場のことなのでは?」と思うようになったそうです。ロジカルであることが、視野を広くしていく様子が手に取るように伝わってきます。

 

ならばと、Bさんは、店舗の「子育て、育休中の女性社員のサテライトオフィス化」の推進を会社に提案しました。店舗との接点を増やすことにより、開発や工場、業務部門がもっと身近に「お客様」を感じるような仕組みをつくろうと考えたのです。サテライトオフィスでの勤務者にはその仕組みの推進というミッションを課すことに。

 

そうすれば、サテライトオフィスに勤務する女性たちが、「意見を出すこと」にもためらいがなくなると考えたのです。いいえ、「意見を出すことなんて一生ない」と思っていた女性でも報告書に意見や提案をわずかでも書く機会を創ることができる、と思ったからです。Bさんは、女性社員がもっと仕事、会社とのかかわり方を強くしなければ、本質的な女性活躍にはならないと感じていました。第二子の出産を視野にいれたときに、「仕事も子育ても人生のプラスにする」と決めた以上は、女性が変わらなければいけないと自覚したのです。エネルギーに溢れる転機の風がBさんを包み込みながら、前へ前へと突き進んでいるのでした。

 

Bさんは、「社内向け報告書、意見書、提案書を簡潔に書こう」というテーマで社内報に記事を書いているそうです。自分が作成した資料もオープンにしています。「女性は縁の下の力持ちでいい、と思っている人が多いのです。ですが、縁の下の力持ちになるためには、社内文書くらい、ちゃんと書けなくては力になんてなれませんから」と。

 

Bさんの言葉から、「自分だけではなく、多くの女性が活躍することが本当の企業の力になる。だから、自分も活かされる」と考えていることがわかります。喘息を患うお子さんを育てるママさんであることの大変さは変わりません。ですが、子ども、そして家族、会社を元気にする」力をもつ女性になったことは、「子どもを第一に考える、それでも仕事も続けたい欲張りな私がいてもよいはずだ!」と想いと方向性を決めたことが、転機の良い種になり、大きなターニングポイントになったといえます。

 

転機の風が吹き始めた時に、Bさんは、前に進むことしか考えませんでした。「女性が子育てのために、仕事の質と量を「想い」とは反する方向に変えるのではなく、同じ方向にするためのイノベーション」をしたい、という考え方こそ、女性の心の奥にある叫びのように感じます。

 

 

  • 仕事の進め方ポイント

①頭を整理できなくなったら、関係図を描いてみる。

 

 

 

 

②ゼロベースで関係図を見ることで、思い込んだ「解決すべき問題」ではなく、

「根本的に解決すべき問題」を抽出する。

③ロジカル+情緒で新しい視点をもつ。(小さなイノベーションの積み重ね)

④周囲への感謝は言葉ではなく、改善提案で示す。(仕事の感謝は仕事での貢献)

 

【なりたい自分になるためのノート】TPMを実践してみましょう。

課題:これから、もう一度働くために、どのようなスキルアップが必要だとあなたは考

えていますか?

 

  • リテラシー(読み、書き、そろばん)のスキルは基本スキルとして必要ですが、

どのようなスキルアップが必要だと思いますか?

 

  •  今、あなたの周りに発生している問題をロジカルに分析してみましょう。

ロジックツリーを参考にして、考えてみましょう。頭が整理できて、「これをなんとかしよう」と決めることができたら、一歩「はじめて」への挑戦がはじまります。

編集長
編集長
イシカワカオル 女性

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