Mammy's paper(マミーズペーパー)の「記事」

【学習の進め方】
 この講座では、基本的な「ターニングポイントマネジメント」のメソッドを8回にわたって解説していきます。毎回、実例を挙げながら理解を進めていきますので、楽しく読み進めてください。「ターニングポイントは風の中で」の著者である石川かおるのターニングポイント経験談です。ドラマのようなストーリーを読みながら、なりたい自分を考える時間にしましょう。
 講座の最後に「なりたい自分になるノート」があります。第6回の課題は「今、私は」を考えることです。自分と向き合う時間をつくりましょう。
<風が吹いたときの私 体験談>を募集しています。このテキストを読んで、「私も変わり始めたことを感じました」というお話がありましたらば、ぜひ、投稿をお願いします。

第6回 テーマ:人生の「ゆらぎ」が自分を磨く

(1)ロジカルと情緒の「ゆらぎ」が自分を磨く

 判断が必要な事象や問題であるかをロジカルに一次判断することが習慣づくと、家事全般においても、効率や生産性を向上するために、行動を変えることができるようになります。ところが、経験や情報(経験者の知恵)を活用して、自分としては今までに選んだことがないような問題解決方法に取り組んでも、どうしてもスッキリと解決できない事案が発生したのです。つまり、まったく新しい解決方法を自ら作り出さなくてはならないという状況でした。

 その事案とは、学童クラブが終わった後の子どもの居場所の問題でした。一般的には「鍵っ子」になるのですが、その時間が不安でした。というのも、同じマンションの子どもがマンションの通路で腕を引っ張られて、連れ去られそうになったという事件が発生したからです。

 ロジカルに一次判断をすれば、これは今までには経験したことのない問題の発生です。かつ、解決策を早急に見出す必要がありました。想いと方向性を明確にして動き出したばかりの頃だったので、「やっぱり、残業は無理があるなぁ」と思いはじめていました。ロジカルだけでは解決できない、情緒の領域が悩み出していました。ロジカルに考えれば、人手をつくることが解決策で、そのためには、2時間程度、子どもと遊んでいてくれるアルバイトを探す、ということになります。とはいっても、簡単には見つからないし、自分がいない時に家に入ってもらうのですから不安もあります。

 ロジカルな解決策はあっても、情緒がそれを容認できない状態です。つまり、「ゆらぎ」です。ロジカルであることは、情緒を失ってしまえば、ただの理屈や机上の空論になってしまいます。どんなに完璧な解決策であっても、実行する人の誠実な意思や想いがなければ、実現できません。

 ですが、この「ゆらぎ」は、時として思いもよらない解決策を導き出すのです。保育園時代から親しくしていた3家庭(親6人、一人っ子3人)で交代見守りをすることにしました。他のママさんたちからはビックリされました。みなさん、家庭内の無言の決定で、短時間勤務を強いられていましたから。親は6人います。誰かが1週間に1度、定時退社、もしくは早帰りをすれば、成立します。

実際には、母親3人が週に2日程度17時に帰って来るということにはなりましたが、それでも会社の人に気を遣いながら帰って来る日数が減ったことはストレス軽減になります。父親が母親よりも早く帰宅できる日は、お迎え当番をする回数も増えるようになりました。預かり場所は、学童の目の前にあった私の家に。この仕組みは、便利さもありましたが、それ以上に、他の2家族のみなさんが、仕事にしても、生き方にしても、尊敬できる方々だったことがこの見守り制度が実現した一番大きな要因です。その意味でも、私にとってはかけがえのない貴重な経験でした。
 1家族は、お母さんが心臓に障害をお持ちのうえに、高年齢出産でした。未来を変える選択を何度もしながら、すべてを「転機の良い種」になさっていました。いつでも、「何か力になれることはある?年齢分だけ、経験と人脈はあるわよ」と「あがいていた」私に声をかけてくださいました。お父さんはいつでも、黙々と学童クラブの行事の準備をしてくださっていました。竹を伐採して作った素麺流しのセットの見事さ、親子ではじめて竹を加工したときのうれしそうな顔が思い浮かびます。すべてが私たち親のお手本になるような「背中」でした。ロジカルだけでは解決できない、人がかかわりあうための誠実さを学びました。

もう1家族は、妊娠中に子宮癌が見つかり、出産と闘病、仕事の3つをご主人と力を合わせて乗り越えていらっしゃいました。そのママさんと話していたときに、「感情的になって相手をなじることよりも、自分をどう変えたらよいかを考えることが大事」だと教えられました。「確かに責任は向こうにあるとは思うけれど、もし自分がもっとアドバイスをしていれば回避できたことだし、そういう関係を築こうとしなかったのは自分にも責任がある」というように、おっしゃっていたことが今も記憶に残っています。見守りがはじまってまもなく外資系企業の部長に抜擢されて活躍なさったようです。

 徐々に私は早出、早帰り勤務に働き方を変え始めました。仕事を考える上では、想いも方向性も明らかになっていましたが、家族のことが頭からスッポリ抜け落ちていたのです。
相変わらずの根拠の無い「なんとかなる」が、まだ強い勢力で私の中に残っていたのでしょう。

ですが、「今、一番、大切なことは何だろう。その一番大切なものを、今は守ろう」と決めたのです。2家族から、人生との向かい合い方を学んだことの結果かもしれません。この結論は、ロジカルに考えても、情緒的に考えても、最適な解であったと思います。

早帰りについては、思ったよりも簡単に職場からの理解を得ることができました。9:30始業の会社で、7:45には出勤していましたから、許されたのかもしれません。「こういう勤務方法も、仕事のできる女性ならばありかもね」と人事部の責任者の弁。「仕事ができる、というのはどういう定義だろう?まぁ、これでも十分に働きすぎですからね。そこは理解しておいてくださいよ」と心の中でつぶやいていました。

おかげで、見守り当番は私の担当になっていきました。そこで、3人の子どもたちに「おうち塾」をすることに。宿題をすること、プラスのドリル学習をして、採点と説明です。その結果、2人は一貫校への受験を目指し、もう一人は自分がしたいことを言葉にするようになりました。思わぬ子どもたちの成長を目の当たりにして、働き方が変わる転機がやってくる予感を感じていました。小学校5年生頃まで、塾は続いたと記憶しています。

こうして、ロジカルさと情緒の「ゆらぎ」のおかげで、「おうち塾」という共働き家庭の教育の仕組みをつくりました。最近は学習塾や企業運営の学童クラブが同じようなサービスを展開しています。20年早く、ここにたどりついていたと考えると、身近なイノベーションをしていたのだと誇らしくなります。女性には、「はじめて」をつくりだす能力が備わっているのでしょう。

これからの時代を生き抜く女性のみなさんへの提言です。今、目の前にあるルールや制度、サービスに絶望することよりも、自分たちでイノベーションを巻き起こしていきましょう。イノベーションとは、技術の革新ではありません。新しく作り出したモノ・コトによって、そこにかかわる人たちの価値観を変えることです。会社、夫、舅姑、社会の価値観に影響することが、「生きづらい世界」を少しずつ変えていきます。多くの子育て経験者がサイト運用やサービスを創発している活動は、イノベーションを求めての行動だといえます。イノベーションは、小さな仕組みづくりや改善をいくつもいくつも進める中で、生まれるものです。アイデアや発想には、制限はありません。「変えたい」「もっと良くしよう」という気持ちを絵に描いて、人に伝えてみましょう。きっと、「一緒にもっと深く考えてみよう」という仲間が見つかるはずです。私が2家族と出会ったように。

【なりたい自分になるためのノート】TPMを実践してみましょう。

 課題  「今、私は」について、次の2点を考えてみましょう。
① 「今、私は」「・・・・・が一番大切です」を書き綴ってみましょう。
「一番大切なこと」と向き合ってみましょう。
② 「はじめて」を選択し、何かを変えてみよう、つくってみよう、と考えてみましょう。もしくは、「あれ?もしかして、はじめての選択をした方が人生が面白く動くのかもしれない」と思えることがあれば、書き綴ってみましょう。

編集長
編集長
イシカワカオル 女性

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