今こそ、アナログエンターテイメント
世の中がようやくスロー再生し始めたと思った矢先の、再自粛要請。さすがに心も身体もやり切れなさを充満させながら、それでも毎日の歯車は回り続けていきます。そんな満たされないエネルギーを梅雨空の下でも消化させてくれるのは、今さら?今だからこそ!本のチカラだと思うのです。
ノーマルモードで経過していく毎日の中では、映画を観たり、雑誌をチラ見するのが精一杯だったとしても、この状況下だからこそ、腰を据えて気になっていた本に取り掛かることができる。そう思えば、今を恨めしく思っている場合ではありません。
ただ純粋に知的好奇心を満たし楽しむための読書にも、知識欲に耳を傾け何かを学ぼうとする読書にも、あらゆるジャンルの本たちが迷える私たちを絶賛歓迎中。
今こそ、時も場所も選ばないアナログエンターテイメントが旬。
ところで、何読む?
とはいえ日頃、本に親しんでいないといざどこから手をつけていいか、迷ってしまうかも。そんな時はまず純粋に読む悦びに浸るところから。スローダウンしてしまった世の中で読書に効率を求めるより、本の世界に確実に足を踏み入れ、ここではないどこかへ飛び立ちましょう。
超私的 楽しみのためのブックリスト
ⅰ. きみは赤ちゃん 川上未映子
これからママになる人も、もうママである人も、命を育む特別な時間をなぞる泣き笑いのエッセイ。命を孕み、世に送り出す全ての女性が体験する凄絶な日々が痒い所に手が届く芥川賞作家の描写に愛しい記憶として刻まれる。
ⅱ. 日本のすごい味 平松洋子
日本全国のすごい味のすごい味たる所以を食のエッセイストのすごい文章で綴られた一冊。気軽に旅も外食もできない今だからこそ紙上で食を楽しむ新境地へ。もちろん読後にポチって楽しむのも乙◎。
ⅲ. マチネの終わりに 平野啓一郎
福山雅治・石田ゆり子主演で映画化されたヒット作。映像を視聴済みなら尚さら原作に触れてほしい一冊。日本語の美しさの中にたゆたう愛と運命について改めて思いを馳せたい。
ⅳ. 何者 朝井リョウ
こちらも佐藤健主演で映画化。主人公は就職活動真っ只中の大学生だけど、どの世代にも異なる角度から訴えかけられる人生の宿題を扱う。一度読み始めたら朝井ワールドからなかなか抜け出せません。
ⅴ. 兄の終い 村井理子
人生の壮絶と言える一コマを淡々と綴るルポタージュ。家族という小宇宙で織り成される複雑怪奇な人間模様は、心の襞にそっと引っかかって読後にふっと蘇る。気づけば人生の終いについて考えてしまう、尾を引く作品。
ⅵ. 世界はうつくしいと 長田弘
いつまでも手元に置いておきたくなる詩編。何気なく開いたページが心に刺さったり、温かいものをもたらしたりしてくれる本という形をした記憶のような存在。
後編では、学びのためのブックリストを